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2016年12月22日 更新

「自分の欲しいものをつくりたい」それがビジネスの原動力——Qrio株式会社 代表取締役 西條晋一

2014年にソニー株式会社とともに立ち上げた合弁会社「Qrio」代表取締役 西條晋一。国内外に大きな反響と話題を振りまきながら、ソニーの技術力とコラボレートして新たなIoTデバイスの開発・提供を行っている。絶え間なくものづくりへの情熱を抱き続ける西條晋一の想いの源泉は、どこからやってくるのか。Qrioのカンパニーとしての未来像とともに、語ってもらった。
文:阿部美香 写真:海老澤芳辰

西條晋一|SHINICHI SAIJO
株式会社Qrio代表取締役。1996年 早稲田大学法学部卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社。2000年 株式会社サイバーエージェントに入社し、ベンチャーキャピタル事業など様々な新規事業を立ち上げる。取締役、専務取締役COOを経て、2010年 米国法人の代表取締役に就任。2012年 伊佐山元氏らとともにベンチャーキャピタルWiLを創業。2014年12月より現職。

ソニーと新しいことに挑戦したい

――これまで、様々なメディアで西條さんは、Qrioとその事業について語ってこられていますが、そもそも40代にして新会社Qrioを設立してまったくの新規事業に乗り出したのは、どういった理由からですか?

 そもそもは、大企業のオープンイノベーションを推進するというWiLのコンセプトからですね。WiLはいわゆるベンチャーキャピタルですが、他のベンチャーキャピタルとの大きな違いは、お金を出していただいてるのが、いわゆる大企業。資金運用のニーズというよりは、WiLに出資することでWiLと一緒にオープンイノベーションをやっていこうという大企業と連携しています。WiLはこれまで、ANA、みずほ銀行グループ、NTTのグループ、博報堂、日産など多くの大企業とともに仕事をしてきましたが、その中で僕が最もカルチャーに感銘していたのがソニーでした。そこで、ソニーと新しいことに挑戦したいとまず思ったんです。

――ソニーとものづくりの合弁会社をやることに、意義があると。

 ソニーは、イノベーティブな製品をずっと作り続けています。僕の子ども時代のウォークマンから始まり、高校生くらいにはプレイステーションが身近にあった。今も大々的に世界に向けて「PlayStation VR」を出すチャレンジをやっていたり、とてもイノベーティブなマインドにあふれている。だから、自分が何か作るなら、個人的にはソニーとやりたいという気持ちがありました。

――まずはコラボレーション相手から、決めていったんですね。

 その上で、じゃあソニーだったら何をやればいいのか。そこで、ソニーが持っている技術で、彼らが事業化、商品化しないものは何か、僕らのアイデアで作れるものは何か?をテーマに探していきました。

自分の欲しいものだからつくりたい

――それが、IoT(Internet of Things)を活用したスマートホーム用デバイスだった。

 ソニーにおける新しい文脈探しですよね。でなければベンチャーを興す意味がない。ソニーはいわゆるデジタル系の黒物家電に強いメーカー。だからこそ、僕はもっとユーザーに身近なBtoBではない白物家電的なものがいいと思いました。だからソニーがまだ本格的には手がけていなかったIoTという切り口でネタを探したんです。

――現在、Qrioではスマートフォンで自宅の鍵を操作できる「Qrio Smart Lock」を販売中。2016年度グッドデザイン賞受賞展にも出展された、鍵やバッグに取り付ける小型のアクセサリーデバイス「Qrio Smart Tag」も市販に向けて準備が進んでいますが、はじめからIoTに乗り出そうと思っていたわけではなかったんですね。

 そういうことですね。今でも、IoTをやりたいという強い想いがあるかといえば、実はそうでもなくて(苦笑)。いまQrioのメンバーは18人いますが、全員インターネット業界の出身。基本的にインターネットというのは、まずサービスありきで、そのサービスを実行するアプリケーションやシステムを構築するものです。僕はサイバーエージェントに長年いましたので、ソニーのようなハードウェアが扱えると、それまでできなかった幅広いテーマで課題解決が可能になると思った。IoTという道具が加われば、もっと多くのできることが生まれます。そしてもうひとつ、僕がIoT、スマートホームに着目した理由は、非常に個人的なニーズからでした。

――個人的なニーズといいますと?

 僕は不動産の投資物件として、10部屋のアパートを保有してるんです。そこに空きが出ると必ず、管理会社が退去チェックに行き、仲介業者がお客さんを連れてくる。そのときに、不特定多数の方にいちいち鍵を受け渡したりしていると、セキュリティが非常に不安。ならば、物理的な鍵のやりとりをしない方法はないかと、アメリカからスマートロックを取り寄せてみたんです。ところが、あまり望ましいデザインや機能ではなかった。だったら、もっと完成度の高いスマートロックをソニーと作ってみよう。ソニー内部を見回すと、スマートフォンを使ってセキュアにハードウェアと通信する技術が見つかり、Qrio Smart Lockのコンセプトが固まりました。

――自分の欲しいものだからつくりたい。ものづくりベンチャーにおいては、とても大切なモチベーションですね。

 そうなんです。基本的に僕がビジネスをやるときには、自分が欲しいもの、自分がこういうサービスがあったらいいなと思うものじゃないと、アイデアが出ないんですよ。好きなことじゃないと、やる気が出ない(笑)。過去の経験からいっても、自分の切実なニーズに合致するほうが、何事も上手くいく確率は高いです。

組み合わせから、新しい付加価値をつくる

――そんな西條さんはこれまで、転職に伴うフィールドチェンジを何回か経験していらっしゃいますが、行く先はご自身のニーズありきで決められているのですか?

 そうですね、社会的意義もありますし、商品、サービスで自分が何をやりたいかがまずある。それが次第に膨らんでいっています。例えば、WiLという大きなベンチャーキャピタルも、僕がもともと立ち上げたサイバーエージェント・ベンチャーズがあり、アーリーステージの投資をやっていた。ところが社会的にインパクト与えようとすると、ベンチャーが育ってきた後が問題。上場すると業績を気にせざるを得ず、大胆な経営がしづらいです。でもWiLが投資に関わった「メルカリ」は、未上場のユニコーン・ベンチャー企業としてダイナミックに経営ができています。大きなファンドを作っていわゆるミドルレイターのステージにダイナミックに投資していくような環境を作りたかった。さらに、WiLのようなコンセプトのベンチャーキャピタルは日本にはありません。それがWiL創業の背景にありました。

――まず、自分が欲しいが、周りにないものをつくる。そして、これまでにない何かと何かを結びつける。このふたつは、西條さんのお仕事のキーワードのように思えますね。

 そうですね。“組み合わせていく”ことは大切です。そこで付加価値を生み出し、プラットホームになりうるものに育てる。Qrioのプロダクトも、わかりやすい例でいえば、目指しているのはiPhone的な存在なんです。iPhoneの価値はデザインのカッコ良さや機能の良さだけじゃなく、Appleが提供する多彩なサービスとの結びつきが付加価値としてあるからヒットしている。僕らが意識しているのはプロダクトのサービス化です。例えば「Qrio Smart Lock」を一般家庭で使ってもらうにも、不動産業界を相手にしたBtoBビジネスを実現するにも、もっと手軽に使えるアプリケーションをセットで提供するとか、付加価値がないといけない。商品だけの価値では、いつか価格競争に巻き込まれてしまいます。そこを補完するような仕組み作りは、常に意識していますね。

――ものとサービスの融合ですね。

 そうだと思います。日本のメーカーはどうもそこが弱い。僕らがソニーに期待されていることも、実はそういうことで。インターネット上で上手にマーケティングするとか、新たな企画をソリューションに落としていくとか、他にない付加価値づくりを、今は積極的に進めています。その結果、「Qrio Smart Lock」がヒットして、世界中にセールス網を持つソニーが、グローバルに展開していければと。

国内No.1 スマートロックを目指す

――Qrioのビジョンとしては、やはり世界展開を目指していらっしゃる。

 一応将来的な視点としてはありますが、いきなりそこを目指すつもりはないです。ソフトバンクの孫正義さんでさえ、海外投資は昔からやられていますが、海外での事業展開はここ数年のこと。あれだけグローバルですごい視点を持った人でさえ、やっぱり手堅く国内でシェアをとり、1兆円くらいの利益出していくところから始められているのは、好例ですよね。企業にとってはやはり、トータルの成果が大事。グローバル、グローバルと唱えながら海外に安易に手を出して、どこも上手くいかなかった、というのは最も避けるべきことです。

――まずは国内での地固めが重要だと。

 今もそうですが、Qrioのプロダクトは基本的に日本からのスタート。まずは国内でシェアを確保することに集中したい。今は「Qrio Smart Lock」を、ヘルパーさんが出入りする在宅介護の現場で活用できないかという話も出ていて、まだまだ様々な可能性がある。アジアやアメリカにも種は蒔いていますが、海外での本格化は、機が熟すまでテストマーケティングを行いながら、様子を伺っていくことになると思います。

――その堅実なお考えも、インターネット大企業やベンチャーキャピタルで様々な世界を見てきたからこそ培われたものかと思います。それでいうと、西條さんはこれまでたくさんの若手ベンチャー人を見てこられた。そこで感じることはなんですか?

 環境に恵まれてるなと思いますね。僕が学生時代に起業しようと思っても、成功例は孫さん、パソナの南部(靖之)さん、TSUTAYAの増田(宗昭)さん、H.I.S.の澤田(秀雄)さんの、現在55歳くらいの世代の方でした。でも、参考にしたくても再現性が感じられなかった。業種も多種多様過ぎましたし、唯一、身近にイメージできそうだったのは飲食。長谷川(耕造)さんのグローバルダイニングくらいで、この人たちのやり方は、簡単には真似できないなと(笑)。

――たしかにそうですね(笑)。

求めるのは「やりきる」仲間

 でも今は、他社メディアやプラットフォームを活用して分散型メディアを立ち上げたり、アプリを開発して世界に配信する道もある。先達の成功事例が多いのは、羨ましいですよね。ただ、その一方で、安易に始められすぎて、会社を大きくしてやろうという気概のある人は相対的に少なくなっている。ちょっと上手く行ったらイグジットしよう、みたいな。実際そういう人も多いです。

――歯がゆい感じはしますか?

 もうちょっとやり切ろうよ、とは思いますね。やっていることも、規模感含めて、スケールが小さい感じなので。それもあって僕がよく言うのは、一度起業してイグジットしたり、メガベンチャーの幹部までいって辞めた人たちが、もう一度自分の経験を生かして起業してほしいということなんです。シリコンバレーではよく目にする、いわゆるシリアルアントレプレナーが日本でも出てきてほしい。人も集まるし、お金も集まるし、成果が出るはず。僕のような人間が頑張れる土壌は大きいですよ。なのでQrioが求めているのも、スキルと経験値のあるレベルの高い人材。ソフトウェアの優秀なエンジニアはもちろん、大きなプロジェクトにちょっと関わった“あれ俺、詐欺”ではなく(笑)、実際に企画や事業の立ち上げを経験してきた方にジョインしていただきたいです。

――そして10年後、Qrioはどうありたいとお考えですか?

 10年後は、テクノロジーは今からさらに進み、例えば自分たちでプログラミングしなくても、Googleが音声入力AIのような多様なAIメニューを用意して、従量課金制で自由に使える世界になっていると思うんです。ビックデータ解析を勝手にやってくれるとか。そこで対抗しても絶対にGoogleには勝てない。だとすれば、それを活用したサービスを提供できる相手、顧客を持ってることが企業にとっては最も重要。Qrioの企業としてのイノベーティブ性とプロダクトをより魅力的に思ってもらえるサービスと品質のいい商品を、作り続けていきたいですね。


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